エーステ秋組単独公演AUTUMN2020の大楽を鑑賞しました。
情勢的に完走できるか不安と心配の日々でしたが、無事に全公演上演できて本当に良かったです。
毎度おなじみディレイ配信での鑑賞でしたが、通信状況が芳しくなく時おり音声が乱れることが…今までそんなことはなかったので、配信側ではなくこちらの問題なのかな…うーん。
途中、臣ママが壁を叩くシーンで画質音声ともに安定したので、叩いて直す昭和方式が効いたのかもしれない。(???)
さてさて、本日のラインナップはこちら!
☆構成と演出
春夏同様構成は変わらず。
二幕の流れ者銀二で使われていた和柄のマッピングが可愛かった。
エーステは舞台装置ではなく、マッピングを使い暗転を少なく場面を繋ぐのが比較的得意な舞台なのかなと思います。
今回はGOD座の出演がなく、代わりに支配人と迫田が再登場でした。
☆一幕:異邦人
異邦人は「見知らぬ人」や「外から来た人」という意味です。
初演を終えてなんとなく形としてまとまった春組や夏組に対して、この時点での秋組はまだどこか「異邦人の集まり」という気がします。
過剰な慣れ合いを拒み反骨精神で高め合う組ではありますが、それ以上に相手に対して不器用な人たちなのでしょう。
特にいつも一歩引いて輪を眺める臣くんは努めて異邦人であろうとしているように見える。
そこを改善するために強制的に主演に抜擢されるわけですが、ポートレイトからさらに深く過去と向き合うのはしんどさの極みですよね。
秋組はいろんな意味でスパルタな組だな…。
伏見臣(稲垣成弥さん)
MANKAIカンパニーの中でも穏やかで常識人で優しい臣くん。
それは彼の性格特性の一つではありますが、鎧の一つでもあるのでしょう。
特に秋組のメンバーは「ケンカには強いけど優しさに弱い」という人が多いので、優しさで過去を包含されてしまうとそこにたどり着くための手札が途端に削られてしまう。
臣くんは無意識にでも知っているから優しさの鎧をまとう。
彼には分るのでしょう。臣くんもまた、秋組の一人なので。
演じた稲垣さんは今回の公演について「感謝しかない。それしか出てこないくらい、ありがとうと思う」と度々口にされていました。
役を通してカンパニーの優しさをきちんと感じ、受け取ってくれる人が臣くんを演じてくださったことがとても嬉しいです。
劇中劇ではアウトローながら端々に優しさがにじむ、まさに「臣くんだから出来るヴォルフ」でした。
手足が長いのでヴォルフの衣装も武器も見劣りしない。
異邦人上演後に那智くんのご両親からの手紙を受け取り、感謝を口にしながら泣き崩れる臣くんと彼に駆け寄る太一。そして見守る三人。
甘え下手な臣くんが涙を見せられる場所が出来て良かった。
本当の意味で「秋組・伏見臣」の物語が始まりましたね。
七尾太一(赤澤遼太郎さん)
役作りに悩みながらも臣くんを気に掛ける太一。
コメディパートととして描かれていましたが、彼は一度ラベリングしてしまうとそこに過度にとらわれてしまう性格のように思います。
「女の子とはこういうもの」「かっこよさとはこういうもの」と。
でも、太一は知っているはずです。
そのラベルははがすことが出来るし、追加することも出来る。
もちろん、別のラベルを貼ることだってできる。
だから太一は優しさで武装する臣くんを肯定して、その上からでもいいから貼ってほしいと「秋組・伏見臣」のラベルを渡します。
秋組が「裏切者」というラベルをはがして、「秋組・七尾太一」のラベルをべったりと貼り付けてくれたように。
優しさの武装を解くのはそれを上回る優しさなんですよねぇ。北風と太陽。
遼太郎くんの太一、裏表や嫌味がないから安心して観ていられる。
ゼロも絶対かわいいだろうなと思ってたんですが、足の逞しさよ。
マギにこういう女の子いたよね…足技が得意なかわいい子…かわいいのはかわいい。
遼太郎くんがかわいいのでね、それはかわいい。
Just for myselfのゼロパート高いから歌うの大変だったろうな…。
新庄リョウ(里中将道さん)
めっ、めっちゃヤンキ~~~~~!!!(褒めてる)
すごい、ニッカポッカがめちゃくちゃ良く似合う…ヤンキー眉毛…うわぁ…八王子にいる。(ド偏見)
初めて出てきた時の悔しそうな苦しそうな顔から、和解を経て迫田の舎弟(違)として楽しそうに「臣さーーーん!!!!」と笑う顔のギャップにきゅんとした。
迫田と揃うと声量がやばい。(褒めてる)
摂津万里(水江建太さん)/兵頭十座(中村太郎さん)/古市左京(藤田玲さん)
ヤンキーコンビは一幕二幕を通して「もっと踏み込みたいけど、どうすればいいのか分からない」というフラストレーションがとても伝わってきた。
相手を思っていてもそれを伝える術を知らないと怒りとして発露してしまうんですよね。
「個人的にかなり攻めた」と言っていた水江くんのドム様、かなり好きです。
頭がおかしくて所有欲の強い天才が大好きなので…シンデレラフィットですね。(明らかな誤用)
十座くん、あの見るからに視野を遮りまくるゴーグルで殺陣するのすごすぎ。
左京さんは前はかなりバンプアップしていた胸元がシュッと…幸くんに怒られたのかな。
ゼロを愛おしそうに見つめるナインが切なくて好き。
皆木綴(前川優希さん)
前川さんの綴くんを観ると「エーステだ~!」ってなる。
毎公演いてくれてありがとう、すごく安心するよ。
ゾンビの綴くん、既視感あるな~なんだろうと?思ったら働く細胞のインフルエンザにかかった一般細胞だった…なんか、ごめん…。
皇天馬(陳内将さん)/向坂椋(野口準さん)
夏単独に引き続きの出演お疲れ様です!
きっと天馬一人だと寂しん坊だったと思うので、椋くんがいてくれてよかった。笑
幕間要員という事もあり、夏単独以上に伸び伸びしてて沢山笑わせてもらいました。
雪白東(上田堪大さん)
だめ、堪大さんの色気が増しすぎている。
しなやかなのに弱く見えないけど色気があって大好き。
支配人は二幕の最後にまとめて書いています。
☆二幕:任侠伝・流れ者銀二
世の中に変えられないものは数あれど、その一つに「歳の差」があります。
わたしもオタクの端くれなので、ネットで知り合った年齢の違う(なんなら知らない)友人が何人かいます。
自分が下の時はあまり感じなかったけど、上になると感じるんですよね。
「あぁ、気が合うとは言えやっぱり年齢が違うんだな」と。
相手からしたら些末な事だろうと飲みこんでも、違和感は消えない。
飲みこんだそれが積もって重なると生まれくてもいいすれ違いが生じる。
過度な気遣いと勝手な憶測から生まれた軋轢は、向き合って話さないと解消しないんですよね。
古市左京(藤田玲さん)
MANKAIカンパニーの中でも年長者に分類される左京さん。
平均年齢の高い冬組と違い一人だけ年代が違う上に、いわゆる「一般的なお仕事」ではないのも手伝って「自分は他のメンバーと違う」となる気持ちはわかる気がします。
プライベートなことだからと一線引きたい気持ちも。
分かる。分かるけど、圧倒的に言葉が足りない。
まぁ、左京さん視点で見たら引っ越す気も生活を変える気もないからね、マンションの事は話す必要はないのは当然だけど…誰かに「引っ越すんですか?」って聞かれたら、左京さんも「その気はない」って答えただろうに、も~~~~!!!!!!
両サイドの動きが見える分、こっちがヤキモキしてしまう。
誤解が解け稽古が再開されて、ガラの悪さが生き生きする秋組。(褒めてる)
劇中劇の百人斬りのシーンは、ありきたりな言葉だけど鬼気迫るものがありましたね…あのシーンがあったから、雄三さんが存在感を増した。
ストーリーを壊さず、大きな違和感を出さず、左京さんだから出来た雄三さんへの敬意だったと思います。
お酒飲みながら東さん相手に管巻いてるのが可愛かった。
兵頭十座(中村太郎さん)
十座くんって、万里くんや臣くんみたいな「拗らせ不器用」とは違ってストレートに言葉が届く人だと思うんですよね。
選ぶ言葉が素直だから捻じれた誤解に繋がることは少ないのかなと。
言葉不足なことに代わりはないから、今回のような「行動から生まれる行き違い」は生まれて当然なんですけども。
罪悪感を感じながらも左京さんの後を追うのも、建前や言い訳を作って行動を制限せず、物事の本質を見ることが出来る十座くんだから出来た事。
斜に構えたり気負いすぎたり自己肯定感が低かったりする秋組に、十座くんのようにフラットな人がいて良かったなぁと思います。
劇中劇ではあのド派手なガラシャツとスーツに爆笑する気満々だったんですけど(失礼)、絶妙に似合っていて爆笑出来なかった悔しい。
オタク九門くんにあげるフライヤーに折り目は付けちゃダメだぞ!
摂津万里(水江建太さん)/伏見臣(稲垣成弥さん)/七尾太一(赤澤遼太郎さん)
水江くんその色(スーツ)似合うね~~~~~?????
何度でもいうけどマジで顔が好きよ…セッツバンリは好き、じゃない…けど…(まだ粘る)
天馬とリーダー同士のやり取りが可愛かった。
臣くんの悪役ほんっとに怖いんですけど!?
めちゃくちゃ怖い…完全に堅気じゃないもん…どの役の衣装もそうだけど、手足長いからかっちりタイトな恰好似合いますね怖い。
そして溢れ出る小物感がめちゃくちゃ似合う七尾太一。
遼太郎くんの愛されキャラが根底にあるからどうやっても憎めないしかわいいし…舎弟感マシマシで可愛かったです。(語彙)
皆木綴(前川優希さん)
本編及び劇中劇がシリアス寄りなのもあり、お笑い成分補填要員お疲れ様でした。
幕間繋ぎで椋くんとフライヤー配りの掛け合い面白かった。
皇天馬(陳内将さん)/向坂椋(野口準さん)
夏単独を経て、万里くんより一足先にリーダーとして成長した天馬くん。
自分とは真逆の役に挑戦し、役者として先に先にと進んでいく椋くん。
万里くんに天馬くん、十座くんには椋くん。
前の季節から一人ずつ、素晴らしいキャスティングだったなぁと思います。
雪白東(上田堪大さん)
二幕オープニングのヤクザソング(違)の「覚悟しいや!」が最高でした!!!
あれを東さんでやるギャップ。ありです。好きです。
堪大さんの大将(あんステ)めちゃくちゃ好きなので、勝手に思い出して感動した。
松川伊助(田口涼さん)
本当なら雄三さんとのシーンがいくつかあったであろう支配人。
時おり堪えたようにしていたものの、きちんと台詞を繋ぐ姿がまさに支配人でした。
彼の一言一言で雄三さんがエーステの中に存在して、今公演の中でとても重要な役回りだったなと思います。
その分他のキャスト以上にメンタル的に背負うものがあったのではないでしょうか。
支配人が、田口さんがいてくださって良かった。ありがとうございました。
☆レビュー
スパイラルエモーションの「エモーション」がエモーションでエモーショナル(?)
二回目の時に抜かれた七尾太一のささやきエモーションがめちゃくちゃかっこよかった…太一も秋組だもんね、かわいいだけじゃないよね…。
他の組では絶対見られない激しい振りに加えて、みんな身長が高いので舞台の余白が埋まる。
oneXoneはテンポ早いし、ステだとキーも違うので歌うの大変そうと思っていたんですが、杞憂でしたね。
秋組はどこを背中合わせにしても決まるけど、やっぱり万里くんと十座くんのシンメはかっこいい。
☆秋から冬へ
上に向かって爆発的に盛り上げるのが夏組なら、横へ横へと根を張って土台をより強固にするのが秋組。
春夏から受け継いだ豊かな土壌に這わせた根は、時に揺るがない大樹となり豊かな実りをもたらし、時に足元に咲く草花となり早急になった歩みをふと緩ませてくれます。
そんな秋に行き合った五人が仲間になった『なんて素敵にピカレスク』。
過去と深く向き合い、今を肯定する強さを得た『異邦人』。
仲間の前で年齢や境遇を遠慮の言い訳にするのは粋じゃないと悟った『任侠伝・流れ者銀二』。
重なる季節の中で、重ならない個性を繋ぎ作り上げるエーステという舞台。
情勢的に不安が多かった時期の大楽で、舞台サイドも観客サイドも擦り切れる緊張の中の完走、お疲れ様でした。
見上げるほどの大樹から、溶け込み寄り添うように咲く朗らかな花まで、色も形も様々に個性を貫く秋の花。
次は冬組単独公演。
本来であれば、これを書いている現在(2020.4.29)はすでに公演が始まっている予定でした。
凍てつく季節にも咲く花々があるように、その季節を迎えたからより深みが増すように、「今」を越えて迎える冬組公演を心待ちにしたいと思います。
★まとめ的な
混乱する世界や社会を見ながら「エンタメって当たり前じゃないんだよな」と当たり前のことを思いました。
日々の安寧があって初めて成り立つものなんだよな、と。
見通しがつかない現状は精神的にシンドイものがありますが、「いつかまた」が幻想にならないよう、今は自粛を徹底しよう。
それくらいしか出来ることがない。
早く執事の誉ちゃんを観て「手足が長い!!!似合う!!!!」って叫んだり、吸血鬼の東さんを観て「わたしの血じゃだめですかダメですね」ってほどほどに狂った感想を書きたいです!!!!!!!
生き延びなきゃそれも出来ないので生きるぞ!!!!!
<追記>
冬組単独公演全日程の中止が決まりましたね。
薄々予感はしていたものの、公式発表を目の当たりにするとやはり悲しい。
春夏秋と三者三葉に咲いてきた舞台。
穏やかで芯の強い冬の花々も観たかった。
今はまだまだ先が見えない状況で仕方ないけれど、いつか、落ち着いたら…と願ってしまう。
現実と舞台の季節がリンクする冬の星座が瞬く頃に、「いつか」が来てくれたらいいな。
調整に奔走してくれたスタッフの皆さん。
1番悔しいであろう、一緒に悲しんでくれるキャスト陣。
エーステを支えているファンの方々。
いつか、みんなでこの日々を笑い飛ばせる日がきますように。
</追記ここまで(4/30 18:30)>